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それこそまあツレヅレに [本の感想]

少しご無沙汰をしておりました。

書きたいことがあって着手していたのですが、これが書けない書けない(笑)

メインとなることを書こうとするのだけど、そこでつっかえて、結局中断していまに至ると、そんな感じなのです。

表現しようとするのに的確な言葉が出てこないという……老化でしょうか^^;

いやいや、基本的にボキャブラリーの少なさがそうさせているような気がしますが、15年くらい前だったら力技で書いてしまっていたなあと、少々感慨深くなったり。

頭を使っていない証拠です、はい。



ということで、書こうと思っていたことは後に置いておいて、最近読んだ本2冊。

久々ですね、本の話も。

まずは高野文子さんの新刊。

ドミトリーともきんす

ドミトリーともきんす

  • 作者: 高野 文子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/09/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


非常に寡作の人です。

久しぶりに単行本が発売になったので買ってみれば、「そう来たか!」という内容でした。

「ドミトリーともきんす」という寮(下宿?)を営む寮母さん母娘と、そこに暮らす科学者たちのやりとりをマンガにしたものなのですが、マンガではあるけれど、科学者たちのある一面を紹介する読み物のようになっています。

紹介されるのは、朝永振一郎氏(物理学者)、牧野富太郎氏(植物学者)、中谷宇吉郎氏(物理学者)、湯川秀樹氏(理論物理学者)、ジョージ・ガモフ氏(理論物理学者)の5人。

それぞれの学者の言葉を引用しつつ、その人となりをおそらく想像して、姿が描かれています。

そして「ドミトリーともきんす」という寮の名前。ジョージ・ガモフ氏の「トムキンスの冒険」という本のタイトルから一文字変えて「ともきんす」にしたことが最後のほうでわかるのですが、この本がきっと面白かったのでしょうね。

トムキンスの冒険 (G・ガモフ コレクション)

トムキンスの冒険 (G・ガモフ コレクション)

  • 作者: ジョージ ガモフ
  • 出版社/メーカー: 白揚社
  • 発売日: 1991/11
  • メディア: 単行本

これは高い本だ(@_@;)

ドミトリーともきんすは、あとがきに書かれているように、製図ペンでほぼ同じような太さで描かれています。本人が言うとおりに「静かな絵」となっているのですが、その静けさが反対に科学者たちの見えない心の熱さを表現しているように感じられ、「淡々としながらもふつふつとした情熱」を見ているような気がしました。

さて作者の高野文子さんの作品と出合ったのは、1979年のこと。この人のデビュー作を、中学時代の友人に教えてもらい読んだことを思い出します。(後に調べてみたら「JUNE」でデビューとありました。全くその通り。これは記憶が間違っていなかった^^)。

その友人は、マンガを見る目が鋭くて、新しいマンガ、一風変わった面白さがあるマンガを探し出すのが得意な人でした。そしていつも私は、その友人に「何か面白いマンガはない?」と聞いては、彼女から本を借りて読むということを繰り返していました。すいぶんいろんなマンガを教えてもらったものです。(JUNEも彼女が買っていました)。

結局、いまや(有名ではないですが)彼女本人も漫画家になってしまい、うちの近所でマンガを描いているんですけどね。

高野文子さんの初期作品を集めた本はこちら。

絶対安全剃刀―高野文子作品集

絶対安全剃刀―高野文子作品集

  • 作者: 高野 文子
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 1982/01
  • メディア: 単行本

1982年1月ですか。短大時代になるのか……。

もっと昔のような気がしていましたが、いや昔ですが、私が高校を卒業した後に出版された本だとは思えず……。高校生の頃だったような気がするので、ちょっと不思議な思いです。

自分が制服を着ていた時代と重なっているような気がしていたので、大いなる記憶違い。ま、デビュー作は高校時代に読んだのだから、それでいいのかな。

とにかくこの単行本は、「絶対安全剃刀」というタイトル通り、安全だけど切れ味の鋭いマンガばかりです。当時、「ついにこんなマンガ家が出てきたか!」と、とても驚いたことを思い出します。

そしてドミトリーともきんすでも、「こう来たか」と。本当に寡作の人で、きっとある程度の熟成を経て表現をしているのでしょう。大変面白く感じながら読みました。

それから高野文子さんが5歳年上だったんだ……と、今回読んで初めて知りました。
(ウィキペディアでも出ていますね。知らなかったことが多い、というか、調べてみることもなかったので結構驚いています^^;)。


もう一冊はこの本。

父と息子の大闘病日記

父と息子の大闘病日記

  • 作者: 神足 裕司
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2014/09/19
  • メディア: 単行本

神足 裕司さんの闘病記を、息子の祐太郎さんが書いた本です。

神足さんと言えば、渡辺和博さんとの共著「金魂巻」とか、西原理恵子さんとの「恨ミシュラン」が有名かと思います。

なんというか斜めに構えつつも、意外と普通の人なのではないかという印象を持っていました。

その神足さんが2011年にくも膜下出血で倒れたと報道されたときは、「もうだめなのか」と思いましたが、最近になって本を出すようになり、復活しつつあると知りほっとしました。

別に好きなライターさんというわけではないのですが、同時代に生きてきた人だということが頭にあって、そういう人が病に倒れるというのはやっぱりショックを受けるわけです。そして、その後はどうしたのだろうと思っていました。

この本では、倒れてからリハビリをし、文章が書けるようになるまでの経過を、息子さんがシンプルな筆致で書き綴っています。シンプルだからこそ、身近な人の心の動きや苦労が感じられるというか、無駄がないのはいいなと思わせる文章です。

そして息子の祐太郎さんが書いた文章に、後に神足さん自身がどう思っていたかを文章化していきます。

神足さんは、後遺症として「高次脳機能障害」があり、新しい記憶をとどめることが難しくなっているということです。なるほど、文章を読めば確かに同じようなことを書いているなと感じられる部分はあります。だけど、考え方や文体というのは簡単に変わりようがないのでしょうね。障害があるとは感じられない面白さのある文章を書いています。

そりゃまあ鋭さはないのでしょうが、障害があってなお、この文章が書けるということは、回復してきているということなのだと思います。

家族はまだ介護でご苦労をされると思いますが、今度は少し変わった不思議な視点で文章を書いていってもらえたらと思いました。

そういえば、神足さんも5歳上の人でした。




年をとればとるほど、手本となる人が少なくなってきます。自分はこの先どうなるんだろうと思うことがあっても、手本となるような人が少なくなってきていて、寂しいなあと思います。

でも高野文子さんや神足裕司さんのように、立場や状況は違えど、新たな表現方法を見つけたり、新たな目標を見つけたりして、前に進んでいると思うと、少し年下の私は心強く感じます。

いくつになっても新しい何かを見つけるのは大切なんだ、と思う今日この頃。

いくら本を読んでも悪いことはないですね。



おまけ。

フライングTBちゃん。
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まるで飛んでいるように手を伸ばして(笑)


おしまい。
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