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凧揚げ [家族の話]

「そして父になる」の上映に先立って、是枝監督や福山雅治さん、リリーフランキーさんによる映画宣伝のTV番組を見たり、雑誌のインタビュー記事を読んだ。

それで、どこで目にしたかは忘れてしまったのだが、是枝監督と福山雅治さんが話していた内容でこんなことがあった。

「父親に凧揚げを教えてもらったことがない」

「えっ?」と思った。凧揚げって父親に教えてもらうものなのかと。

実際、私は凧揚げを父に教えてもらった。

凧につける足(帯)のつけかたから、凧につける紐のバランス。どうすれば上手くあがるのか、父に教えてもらった記憶がある。

お正月。近所の駄菓子屋でも、おもちゃ屋でも、もしかしたら神社の前に並ぶテキ屋さんでも扱っていたかもしれない。そこで普通に紙でできた凧が売っていた。それを買ってきて、社宅の間の広場で凧揚げをした。

夢中になるのは父のほうで、娘は結局置いてけぼりになるのが関の山。

だけど、教えてもらったお蔭か、その後いつぞやか凧を揚げる機会があり、ひょいとやってみたら、するすると凧は揚がっていった。

是枝監督がインタビューで凧揚げについて語っている記事↓
http://milkjapon.com/article/2013/08/interview-hirokazu-koreeda.php

誰に教えてもらったのかは知らないが、父はそういった遊びが好きな人だったと思う。お祭りが好きな人でもあった。

私が、どちらかというと男の子が好む凧や独楽などに興味を示すものだから、そういう物には一緒になって遊んでくれていたように記憶する(大昔のことなので、かなり記憶があいまい^^;)。

そんな父は嫌いではなかった。

普段は病気のせいもあったのかもしれないが、いつも不機嫌で、神経をピリピリさせているような人だった。私なんぞは、何度も怒鳴られたし、殴られたこともある。

でも、気持ちに余裕があり、時間もあるようなときは子どもを楽しませてくれることもあったな、と思い出す。


是枝監督のインタビューを読むと、「凧揚げを教えてもらっていないから、凧を揚げられない」と言う。そして「普通は、凧揚げを教えるのは父親」と言うのだ。

教えてもらっていない男の子がいて、その子が父親になったときに、「凧揚げを教えてくれ」と言われたら、どんな気持ちになるのか……想像してみた。

「なんで凧の揚げ方を知らないんだろう」とまで考えが及ばない人は、いまだったらさっさとネットで凧の揚げ方を検索して、その通りにしたりするんだろう。

普通は、とくに父親に教えてもらったことがないとか、そんなことにまでに考えが及ばないだろうと思う。

そういう場面もなかったら、一生ないことだろうから、些末なことではあるのかもしれないけれど。


そういえば昨晩、お箸の持ち方について夫T君と話をした。

ある番組で、40代前半の男性のお箸の使い方を見て、T君は「お箸の持ち方がひどいな」と言った。「お箸の持ち方は後でも練習すれば直せるんだから、直したほうがいいのにな」と言うのだ。

私もその通りと思うが、「親が教えてくれなかったんじゃないのかな」と言うと、「そうかもしれないな」と言うT君。

T君のご両親には申し訳ないが、「そういえば、お父さん、お母さんのお箸の持ち方はあんまりよくなかったよね」と言ってしまう私……。まあそこはT君も同意せざるを得ないわけで……「じゃあ、誰に教わったのか?」と聞けば、「祖父さん」とT君は返事をした。

なるほど。

そういう代わりをしてくれる人がいればいいんだ。



お箸の持ち方を教えるというのは躾の一つかもしれない。

では凧の揚げ方は?

躾ではないけれど、教育(教養?)の一つにあたるのかな。

考えてみると、そういうことを、子どもに教えられるだけのものを身につけておかないと、いい大人になれないのかもなと、ふとそんなことを思ったりした。





河川敷.jpg

昔は河川敷で、よく凧揚げをしているのを見かけたものだけど……。

「電線があるところでは凧揚げをしてはいけません」って言われ始めたのは、たぶん小学生の頃。

その頃からかな、あまり凧揚げをしている風景を見なくなったのは。


そりゃ、凧の揚げ方も教えてはもらえんやろ(笑)



おしまい。
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nakasama

私も幼い頃は父親と竹ひごを使って凧を作ったりもしましたね、懐かしいなぁ〜。
うーん、住宅街では揚げる場所ないですもんねぇ...。
畑を見ても高圧線ばっかりですよー”ー
たまに近所の子供たちが公園などであげているのも、スポーツカイトばっかりですから、凧を見る機会は本当に少なくなりました。
この辺だと海岸までいくか?相模川の河川敷とかでしょうか?
鎌倉などでは毎年由比ケ浜で凧にいっぱい鯉のぼりつないで揚げているのは「凧の会」みたいですから^^年配の方の保存活動とか趣味の世界になっちゃってるんでしょうね。
将来エネルギー事情が変わって、電線が消えて、親子で凧揚げしてる姿が見られるようになって欲しいな。^^;
by nakasama (2013-10-23 10:35) 

toro

*nakasamaさま*
凧を揚げるということ自体がなくなりつつあるんでしょうね。
そりゃー見ないし、揚げ方もわからないよなと思いました^^;
仕方のないことなのかもしれませんが。
とはいえ、是枝監督の、何ともセンチメンタルな発言に、
息子と父親の関係って、結構不思議な根深さがあるように見えまして。
「凧の会」の人たちも、息子がいる人は揚げ方を教えたりしたんだろうか
と思いを馳せてみたり。
どうなんでしょうねえ。年代にもよるのでしょうが、nakasamaさんの
ところとか、うちもそうですが、意外と教えて貰っていますからね。
そういえば、オットはお父さんとキャッチボールをしたことがないと
言っていました。そんな感じのことかな……。う~む。


*めりっささま*
*あんぱんち~さま*
ありがとうございます。
by toro (2013-10-24 07:55) 

カズ

toroさんおはようございます。
はじめまして?という感じはしないのですが書き込みは初めてです。
ココファームの記事のときにチャンス到来と思いましたが(地元なので)、そのままもたもたしていて書けずでした(笑)。こぎんさんの2つのブログでtoroさんとnakasamaさんのお名前はよく拝見しておりました。めりっささんはよく知っています。

「日々の小さな幸せ」とこぎんさんは仰っておられましたね。
日々の中には至る所に実はそれがあって(凧揚げもそれだと思いますし)、瞬間瞬間の小さな幸せを感じられる感受性を持てればいいなあと思ったりします。
小さな幸せをこぎんさんらしく照れで「塵」として、その塵が積もれば大きな幸せに育っていくんだよとたぶん仰ってたんだろうななんて今は思います。
故郷の思い出や郷土芸能などの伝統を心に大切に持ちながら、リアルな毎日を綴れる方だったと思います。
こぎんさんのお母さんから引き継がれてきた「一枚の紙から屋形船」がどこかで生きてくれればいいなあ。
すみません私のブログはniceもコメ欄も無いもので私のは軽くスルーしてください!ありがとうございました。

by カズ (2013-10-26 06:59) 

toro

*カズさま*
おはようございます。いらしゃいませ!
カズさんのコメントをこぎんさんのところで拝見していたように思います。
山登りのことで何か書いておられませんでしたか? 
勘違いだったらごめんなさい。

こぎんさんのブログは見られなくなっちゃいましたね。
「塵も積もれば」という言葉が好きだとおっしゃっていたのが、印象に残っています。
そう言いながら、たくさんの塵を撒き散らしていった方でもありましたよね^^;
私は少しだけ、その塵を拾わせてもらった一人でした。
塵というとマイナスなイメージがわきますが、まさに「小さな幸せ」でしたね。
本当に、大事にしないと。

こちらこそ、ありがとうございました。
by toro (2013-10-28 08:07) 

toro

*シルフさま*
ありがとうございます。
by toro (2013-10-28 08:08) 

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