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老いてもいいんだ。 [本の感想]

家でじっとしている時間が続いているけれど、インプットの時間であると思えば、ま、いいやと。

そんな思いに合わせて、せっせと読書をしております。なぜか新書が続いているけれど。

神(サムシング・グレート)と見えない世界(祥伝社新書308)

神(サムシング・グレート)と見えない世界(祥伝社新書308)

  • 作者: 矢作 直樹
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2013/02/02
  • メディア: 新書


「人は死なない」を書いた矢作直樹氏と遺伝子研究に尽力してこられた村上和雄氏との共著。意見交換という形で交互に一つのテーマに沿って書かれています。

矢作氏が書かれた本を一通り読んできたつもりですが、一番おもしろく読めました。

なかでも村上氏の発言がおもしろい。

村上氏の遺伝子解読を基礎として、その遙か後方から支えているもの、「人智を超えた大いなる力」とも言っていますが、「神(サムシング・グレート)」の存在を認める発言が実感のこもったもので、なるほどと納得できるものでした。

以前も書いたことで、私の父が言っていたこと。発電所の設計・施工に関わる仕事をしていた父ですが、計算を得意としていました。その父が言っていたことで、計算では算出できないものがあると。数字では表せない何かがあると感じていたそうです。

それと同様なことを村上氏は言います。

DNAの配列は読めたけれど、解読ができない。「DNAは細胞の設計図ですが、設計図だけでは家は建ちません。建設業者が不明で、DNAそのものを誰がデザインしたのかがわからないのです」と。

「部品設計図としてのDNAという存在は理解できますが、命の設計図、つまり「魂の設計図」は科学ではまったくわかりません」とまで言い切ります。

では、それは何? と考えたときに「スピリチュアル」とか「魂」とか、そういう言葉が必要になると言うのです。

いろいろと研究をしてきた学者が、そんなところにたどり着いてしまうという不思議がありますが、「遺伝子」という領域において、そこにたどり着くのは仕方のないことなのかもしれないと感じました。

一方、矢作氏は医療の現場で「あの世」があるとしか考えられない体験をしています。その不思議な体験を重ねるうちに、肉体は滅びても魂は生き続けるのではないかと考えます。そして「人は死なない」んだ、というところに行き着くのです。

ということで両者とも魂はあるのではないかというスタンスで話は進みます。

読み進んでいくうちに、いいな~と思ったのは、村上氏が「私たちの体はレンタル品」というくだり。

「私が魂の存在に惹かれるのは、身体の想像を絶する入れ替わりの仕組みを知り、考察したからです。細胞は毎日、ものすごい勢いで入れ替わっています。では、それらの細胞はどこから来ているのか?」……「私たちが体に持っている元素は、すべて地球の元素です。では、地球の元素はどこから来ているのかと言えば、もちろん宇宙から来ています」……つまり地球の元素、宇宙から来ているものでできている体なのだから借り物であると言うのです。

では借り主は誰なのか。体が借り主だとすると「体は60兆個の細胞でできており、それらは一年くらいで一度ほとんど全部入れ替わりますから、そういう主体性のない存在に借りる権利はありません」

では心か? というと、細胞と同じで心も「しょちゅう変わります」。「そんな不安定なものに体を貸せるわけがない」といいます。

すると残っているのは「魂」なのではないか、というのです。


ではなぜ生まれて、なぜ死ぬのか、と考えたとき、魂があって「あの世」があると思えば説明がつくことになります。

村上氏は「死という問題を解決しなければ、人間は幸せになれません。魂が永遠の命みたいなものであり、肉体的な命はなくなるけれども魂はずっと続く。そう考えると、死がそれほど恐いものではないと理解でき、少し不自由だけれども肉体を伴って現世に滞在し、時期が来れば元いた場所に帰って行くという仕組みは腑に落ちます」といいます。

そして、「巷で人気のアンチエイジングは無駄なのです」…「加齢という法則には勝てません。アンチエイジングはきわめて不自然です」…「むしろ「見事に死ぬ」「どう老いるか」を論じたほうが、健康的で自然です」とおっしゃいます。

わが意を得たり!(笑)

肉体が細胞分裂のたまものと思えば、その分裂状況が遅くなったり、不具合が起きたりすると、年老いるというのはそういうことなのではないかと思っていました。

「レンタル品」というと極端かもしれませんが、自然に肉体をお返しするということは「死」であるわけで、起きて当然のことです。でも死んでしまうにもかかわらず、何で生まれたのか。魂があって、あの世があると思うと納得できるから不思議です。

若作りしたって、一生懸命サプリメントを飲んだって、いつか死は訪れると。きっと遺伝子という設計図に書かれたとおりに、肉体は生きるのだろうと感じますしね。

つまりは恐れている死が近づくような気がするから、老いたくないのであって、死は恐れるものではないと思えば、老いも恐くはないのではないか。そう思うのです。

あと生きられても20年くらいかな、という年齢になって、老いというものに思いを巡らせていました。「美魔女」という熟年の女性がもてはやされて、いつまでも若く美しくあることがいいことのように言われています。しかしそんな風潮に抵抗感を持っていた私には、この村上氏の発言は勇気をもらえるものでした。

「老いてもいいんだ」と。



この本では、もっと多岐にわたって、「神」や「魂」「あの世」について語られています。

遺伝子の話もとてもおもしろかったです。

興味のある方はぜひ。新書だからすっと読めますよ~。



あと、何で読んだのかは思い出せないのですが、「胸腺」という臓器の移植の話。

胸腺というのは、リンパ球の分化増殖に関与していて、免疫機能の中枢的役割を担うものです。思春期まで増大を続けますが、その後退縮して脂肪組織に置換されるもの。

その若い人だけが持つ胸腺を、年老いた人に移植すれば免疫機能を高められるのではないか、ということで移植が行われた事例があったそうです。

それで効果が現れたかというと、胸腺は結局働かなくなり、やはり若い肉体ではないと生かされないということがわかったというのです。

その話を読んだとき、なんと胸腺は年齢を感じるのか? と思ったりもしましたが、いま思うと、その胸腺を生かす何らかの細胞が若い人にはあるけれど、年老いた人にはそれがないということなんだと、そう理解しました。

つまりは、どんなに抵抗したって、誰にでも死は訪れるし、誰にでも老いは訪れるのだということなんですね。

当然のことなんですけれど。


死や老いを忌み嫌う必要なないと、この本を読んで思った次第であります。



おしまい。
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コメント 4

toro

*あんぱんち~さま*
ありがとうございます。
by toro (2013-02-22 10:59) 

nakasama

いろいろ思いながら読ませていただきましたが、コメントにまとめられない(笑)
またあらためまして〜^^
by nakasama (2013-02-22 20:11) 

めりっさ

アロマの試験のために、この1年、解剖生理学をちょっとばかり勉強して来ました。身体の仕組みってホントにスゴイんですよね~! これを創造できたのは「神」以外にありえないんじゃないかって思ってしまうのです。
だから、なんだか分かる気がします。
美魔女は単純に気持ち悪いと思います(笑)!


by めりっさ (2013-03-09 10:44) 

toro

*めりっささま*
アロマの勉強にも解剖生理学が含まれるんですか!? すごい!
私は本を読んでしか知りませんが、本当に人間の身体って、よくできて
いますよね…。
その生身の人間ですら、自分の身体のことがよくわかっていないという
現実を考えると、神なんだろうなと。もちろん作ったのは。
どんな設計図なんだろうかと思ってしまいます。
それも個人個人違うんですから、スゴイとしか言いようがないです。
「サムシング・グレート」(偉大なる何か)のという言い方もなかなか
よかったです。なるほど~という感じ。

美魔女はねえ…あはは。彼女たちは楽しいんでしょうね…。
まあいいんだけど。
by toro (2013-03-12 08:33) 

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