SSブログ

天童氏、再び。 [本の感想]

今朝の朝日新聞で、斎藤美奈子さんが村上春樹氏の「1Q84」を、「男の子目線の小説」とバッサリと小気味よく切ってくれていて、ふふふと笑ってしまった。

私は読んでないけど。

大量に本を読んでいる斎藤美奈子さんが言うからには、そうなんだろうなと思う。この人は結構いいところをついてくる。

友人とメールでやりとりをしていると、「そのうち、『1Q84』は古本屋で易々と買えるようになると思う」と言っていた。そうだろうな~。

ま、いいんだけど。


さて、天童荒太氏、読破計画。着々と進んでおります^^;

今回はこれを読んだ。

幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉 (新潮文庫)

幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉 (新潮文庫)

  • 作者: 天童 荒太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/01
  • メディア: 文庫



遭難者の夢―家族狩り〈第2部〉 (新潮文庫)

遭難者の夢―家族狩り〈第2部〉 (新潮文庫)

  • 作者: 天童 荒太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/02
  • メディア: 文庫



贈られた手―家族狩り〈第三部〉 (新潮文庫)

贈られた手―家族狩り〈第三部〉 (新潮文庫)

  • 作者: 天童 荒太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/03
  • メディア: 文庫



巡礼者たち―家族狩り〈第4部〉 (新潮文庫)

巡礼者たち―家族狩り〈第4部〉 (新潮文庫)

  • 作者: 天童 荒太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: 文庫



まだ遠い光―家族狩り〈第5部〉 (新潮文庫)

まだ遠い光―家族狩り〈第5部〉 (新潮文庫)

  • 作者: 天童 荒太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/05
  • メディア: 文庫


95年に発表された「家族狩り」を大幅に改訂して出版された本だそうだ。

もとの「家族狩り」をまだ読んでいないから、どれほど変更されたのかわからないけれど、アマゾンのカスタマーレビューを読むと、書き下ろしといってもいいほどの改訂らしい。

そうだとすれば腑に落ちるのだが、直木賞を受賞した「悼む人」に非常に通じるところが感じられ、この作品の延長線上に「悼む人」はあるのかな、と思わせる小説だった。

物語を説明すると、簡単に言えば家族のお話。

息子の死から、それぞれの思いのせいで家族がばらばらになってしまった馬見原刑事。子どもの虐待に立ち向かう氷崎游子。社会に無関心だったのに、なぜかいろいろな事件に巻き込まれ考えを変化させていく巣藤浚介。などなど、登場人物が多彩であるが、家族に内在する憎しみや哀しみが、度重なる一家心中のような事件であぶりだされ、その憎しみや哀しみを何とか乗り越えようという人々の心の葛藤を描いている…と言ったらいいかな。

家庭内暴力や虐待がなぜ起きるのかといったことがテーマにはあり、要するに家族のあり方を問う作品であり、人の心の持ち方を考えさせる作品なのだと思う。

いまの政治や経済社会…世界で起きている紛争にも、疑問をたっぷりと投げかけている。

いつも小説を読むと思うのは、著者は何でこの小説を書いたのかな、ということだ。小説の善し悪しもさることながら、なぜ書いたのかがいつも気になってしまう。

そんな作品ばかり読んでいるせいかもしれないけれど…。

歴史小説や恋愛小説ではそんなことはあまり考えないんだけれどね。

天童荒太氏についていえば、天童氏の「良心」と「使命感」というものが感じられる。全く赤の他人が起こした事件なのに、心を痛めている天童氏の姿が見えてくるし、それがどうして起きた事件なんだろうと考えているのがわかる。とくに子どもが起こした事件。家族が関係する事件。

人を傷つけることをやめたいし、やめさせたいと思っているんだろうなと思う。

また、その傷を癒したいとも思っている。

「包帯クラブ」なんかはその最たるもの。

優しい人なんだろうと思う。

優しいけれど、残虐な描写もいとわず表現しようというのは、使命感なんだろうなあ~。




ちなみに小説はあっという間に面白く読めました。




あと数冊で天童氏の作品は読破できます。

残りはチビチビと読もうと思っております。




おしまい。
nice!(5)  コメント(7) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 5

コメント 7

こぎん

『1Q84』・・・読みましたよ~。感想はちろっとあとで・・・
あ、すぐに100円で売られるとおもいま~す。
ある種、みんなが読んでいるから・・・な日本人的習性で売れた?
ま、売ったもん勝ち??

私は、どうも本や映画・・・ドラマでもなんでも、清く美しい・・・そんなものを今は、求めているようです。
天童荒太は・・・以前『永遠の仔』で、その暗さがなんだかな~、
とっても重かったです。
by こぎん (2009-06-30 10:13) 

ケイクス

あ、天童荒太さん。
↑の方が書いていらっしゃる『永遠の仔』と
『悼む人』だけ、読みました。
前者のほうが、暗いけれど、何だか読んで
ずしん、ときました。あとはまだ。

最近は、本を読破する体力と気力に
欠けてます(+_+;;

昔は面白いと一日一冊読んでしまうことも
あったのに(-_-;;
by ケイクス (2009-06-30 21:35) 

toro

*こぎんさま*
「1Q84」の感想、お待ちしていました! こぎんさんのところでお書きに
なられますね~。楽しみにしています。

天童さんの作品は確かに暗くて重い。でも、「あ~それでもいいんだよな」と
許すことができるような、そんな説得力があるんですよね。
それからストーリーが面白くてついつい^^; あと残すは3冊で読破です。

*ケイクスさま*
天童さんの作品は「永遠の仔」を読んだのが最初だったのですが、
「こういうテーマで小説を書く人がいるんだ」とちょっと驚いて、それから
読んでみようかと……。そして「悼む人」を読んで完全読破計画(笑)
「家族狩り」も面白かったです。一気に読めます。
オススメですよ~。
by toro (2009-07-01 08:02) 

nakasama

「1Q84」そう言われるとだんだん読んでもいいかな〜?的な気持ちになってきました。
(あるんだから読めばいいのに我ながら変なやつ^^;)
村上さんの作品てそんなに読んでないんですけれど、物語はとんでもない方向に進んでしまうにもかかわらず、主人公の立ち位置がはじめと最後でほとんど変わってないところが結構好きなんですけど・・・。
最近本読むと頭痛がしちゃうんですよね〜、
そろそろ老眼鏡だな?(w_-;

「永遠の仔」はドラマ化されてましたね、天童さんのも気になってるんですけど、表紙にちょっと抵抗があって・・・(笑)

by nakasama (2009-07-01 10:22) 

toro

*nakasamaさま*
ぜひお読みくださいませ~。そして感想をお聞きしたいです。
(自分は読まないくせに人の感想を聞きたがるという…^^;)
最近、小説の影響力ってどうなのかな? ということを考えます。
若い頃は小説の中に、こんな女性になりたいと思うような手本を見つけたりした
ものですが、いまはどうなのかなあって。
なので、村上春樹さんの今回の小説の影響力とは…と思うのですが、どうやら
斎藤美奈子さんによると男性向けらしい(笑)
ま、いいんだけど。

「永遠の仔」のドラマは観ていないんですよ~;; ちょっと興味を持つタイミング
がずれたみたいです。
by toro (2009-07-02 07:51) 

めりっさ

はじめまして。
1Q84は評判やはりイマイチのようですね。なんとなく予想はしていましたが…。
天童荒太も、案外好き嫌いの分かれる作家なんですね。
「永遠の仔」で衝撃を受け、ご紹介の5部作も、だいぶ前になりますが夢中で読みました。かなり残酷ですが、それを書く必然性が彼の中にあったのだろうな…という気がしました。
私は正直、「包帯クラブ」以降はちょっと…って感じなんです。
もしかして、暗くて重い作品が好きなだけだったりして…^^;
by めりっさ (2009-07-02 19:12) 

toro

*めりっささま*
はじめまして。ご訪問ありがとうございます^^
1Q84の感想ばかりをあちこちで読んで、ふふふと一人で笑っています。
自分は読んでいないのに…^^; なかなか感想だけで十分面白いですね。

天童さんは「包帯クラブ」以降、方向性がはっきりしてきてしまったんでしょうか。
そんな気がします。
ガッツリ読むには、それ以前。暗くて重くて、すごくいいです^^
ストーリーとしても面白く読めますよね~。作家の筆力が感じられますよ~。
by toro (2009-07-03 08:55) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。