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そういえば書いていなかった本の感想。 [本の感想]

村上春樹氏の「1Q84」が既にミリオンを超えたとかで話題になっているが、先日、じゃあ買ってみようかなと思って本屋さんに行ったら、並んでいるのは2巻目ばかりで急激に買うのがうせてしまった。それより「みんな1巻、2巻同時に買えよ~」と不満たらたら。

1Q84 BOOK 2

だけど、この本はたぶん買わないと思う。文庫化されたら買うかもしれないけれど、本当のところ、村上春樹氏の小説はもう読まなくてもいいやと思っているから。

それはどうしてかというと、かれこれ14年前のこと。

阪神淡路大震災が起きた年、その前年末に私は大阪の会社を辞めた。会社が借金だらけで今にも倒産しそうという状態であったから。退職後、夫T君から東京転勤になるので「再就職はしないように」というお達しがあり、仕事もせずにプラプラと過ごす日々が続いた。

当時、そんなにお金を持っていなかったので、近くの図書館通いが始まった。

そしてそのとき読んだ本の影響で、村上春樹氏の小説をぱったり読まなくなってしまったのだと思う。

そこの図書館では、現代のアメリカ文学を貪るように読んだ。特に、ティム・オブライエンとトバイアス・ウルフの小説が面白くて、絶版になったものも図書館にはあったから、おそらく翻訳されているものはほとんど読んだと思う。

ティム・オブライエンの小説は村上春樹氏も翻訳しているからなのだろうが、この後、ハルキ氏の「ねじまき鳥」を読んだとき、ティム・オブライエンとハルキ氏の相似性を感じてしまって、さらにハルキ氏の小説の方向性が見えた気がして、「ねじまき鳥」以降の小説には手が伸ばせなくなった。

翻訳のせいなのか、志向のせいなのかはわからないけど、、、。

ティム・オブライエンの小説のほうが面白く読めたんだ。たぶん今後ティム・オブライエンの小説が翻訳されれば読むと思うけれど、ハルキ氏の小説は読むかどうかはわからない。

「遠い太鼓」や「シドニー!」のようなエッセイは面白いんだけど。

その志向性が似ている(と私は思う)せいなんだろうけれど、だったらティム・オブライエンのほうが好き(共感できる)、というのが正しい。そのためにハルキ氏は読むことはないなということだ。

てなわけで、小説家のハルキ氏には貢献できない女が一人…と^^; 


さて、書いていなかった本の感想。

あっという間に読めた…

悼む人

悼む人

  • 作者: 天童 荒太
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/11/27
  • メディア: 単行本


一言で言ってしまえば、「一人の青年が、人が死んだ現場を悼んで歩く」という小説。死んだ原因となった事件や事故は問題とせず、ただその死んだ人が生きて存在したという証を心に刻み、忘れないという作業を続けていく。

小説は、その青年(静人)の行動を描写しつつ、「どうしてそんな行為をするのか?」という疑問の答えを見つけようとする人々が描かれている。

物語は面白く読めた。「だからどうなの?」っていう意見や感想が多いと思うが、そんなことより天童氏がこれを書くのは相当大変だったろうなという思いが先に立った。

雲をつかむようなテーマだと思ったから。答えが出ないテーマ。そもそも静人に何でこんなことをさせようと天童氏が考えたのか。

これを書こうと思ったこと。そして何とか書き上げたこと。この行為だけで、ただただ天童荒太という人は優しい人なんだと思った。

思うのだが、人が生きているという奇跡を、悼む人を通して伝えたかったんじゃないのかな。

本の最後に記されている参考資料のタイトルを読むと、この人は「人の生と死にちゃんと向き合いたいんだ」というのが感じ取れた。

たぶんそう。

真面目で、心がどことなく震える本でした。


そして真山仁氏。

レッドゾーン(上)

レッドゾーン(上)

  • 作者: 真山 仁
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/04/24
  • メディア: 単行本



レッドゾーン(下)

レッドゾーン(下)

  • 作者: 真山 仁
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/04/24
  • メディア: 単行本


刊行されたと知ったとき、すぐに本屋さんに買いに走った(笑)

「ハゲタカ」の続々編。

この人の小説は本当にわかりやすい。要するに経済小説なのだが、株式市場のことを面白く知りたいと思ったら、いい教科書になるのではないかと思う。

前作「ベイジン」で中国のことを題材にしていたが、これで味をしめたのか、今回も中国人が出てきて、日本人には理解出来ない中国人の価値観が、主人公の鷲津を狂わせて行く。

いや、別に狂いはしないんだけど、中国ではどうしてそんなことが起こるのかというわけのわからなさがよく表わされていて、そのイライラを読んでいるほうも味わうことができる。

話は日本の基幹産業でもある自動車会社が、赤いハゲタカ(中国人)に買収されるかもしれないというもの。それを日本人のハゲタカ鷲津がどう料理していくか…という感じかな。

いまままさに「ハゲタカ」というタイトルで映画が上映されているので、そっちを見るのも面白いかもしれないなと思っている。




おしまい。
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コメント 8

もりけん

村上さんの話、よくありがちなことですね。うちの家内も三谷幸喜
さんの大ファンでしたが、ニール・サイモンとかを教えたら、え!?
って、感じでしたし、佐野元春さんが好きだったので、B・スプリングスティーンを聞かせたら、またまた絶句していました。
by もりけん (2009-06-12 17:53) 

こぎん

『1Q84』・・・ぼんが買ったんで、吉川『三国志』を脇に置いて、読んでるingです。
『ノルウェー』以来なんですよ~。『ねじまき』も途中で止めて・・・
なんだか苦手な作家だったです。
今のトコ面白く読んでいます。
ティム・オブライエンを語れないのが・・・残念ですが・・・。


by こぎん (2009-06-12 23:52) 

ケイクス

はじめまして。
『1Q84』、そうですか。。予約してしまいました。
複雑な思い。。ですが、本から遠ざかっていて、
またいろいろ読んでみたいと思っているところです。

by ケイクス (2009-06-13 02:11) 

toro

*もりけんさま*
あはは。まさに…。奥様、災難でしたね…^^;
ハルキ氏とこのアメリカ人作家2人の圧倒的な違いは、ベトナム戦争なんだと
思うのです。2人ともベトナムで従軍しているから。それを題材にもしているし。
そこで、本当の恐怖と、想像の恐怖の差っていうものがあるかもしれないな~と
思っています。そのためにハルキ氏は体力勝負なのかなと(意外と多作)。
ただ方向性は本当に似ているんですよね~。

*こぎんさま*
いままさに読んでいらっしゃるんですね。感想をうかがいたいです。
読んでみてもいいかなあ~という気もしないでもないんですが、やっぱり
「ねじまき鳥」以降の本を買っても積読状態なんで、無駄なのかもと思って
みたり…。
エルサレム賞のスピーチはよかったんですけどねえ。

*ケイクスさま*
ご訪問いただきありがとうございます。
いや、「1Q84」は読んでいないんで、偉そうに書いていますが、案外面白い
可能性もあるわけで、、、。読んだ後の感想をお願いします。
でも、1巻、2巻ということは…まだ続くんですよね(上下巻ではないし)。
どのくらいの長編になるのかなあ。



*余談です^^; 「1Q84」の内田樹氏の書評を読んで、文庫化されたら
読もうかな~っていう気になって来ました。興味があるのは、ハルキ氏の
良心ですね~。
by toro (2009-06-13 10:24) 

mamire

「1Q84」は、すごい人気のようですね。
わたしも、「ノルウェー」以来、村上春樹氏の本は読んでいません。
もういいや、って思うこと時々あります。
自分の感性に合わないとわかると、埃にまみれてしまいます。
toroさんは、本当に本をよく読んでいらっしゃいますね。
「悼む人」を読んでみたくなりました。
時間があったらですけど。
by mamire (2009-06-13 12:41) 

toro

*mamireさま*
「1Q84」の人気は本当にすごいですね~。出版社もホクホクだろうなあと^^;
ハルキ氏は悪くはないんですけど…。
私の読書は活字中毒なんだと思っていて、読んだ本の内容が頭に入って
いないこともしばしなんです(笑) これじゃあ読書家とはいえないなと思いつつ。
現在は天童荒太さんの作品を読破しようと企んでいるのですが、どうなること
でしょう。。。
by toro (2009-06-16 07:19) 

nakasama

「1Q84」上下ともなぜかうちにあります。^^;
村上春樹を読んだ事がないだんちゃんが早くから購入していたようで・・・(流行りに弱いんです^^;)
ちょっと忙しいのでめくってみてもいないんですけど・・・

toroさんはたくさん本を読まれてるんですね〜、尊敬。

私って変なとこあまのじゃくなもので村上春樹さん、実は「ノルウェー・・・」読んでないで〜す。^^;
初めて読んだのは知らずに読んだ翻訳本でフィッツジェラルドの「偉大なるデスリフ」でした。
ティム・オブライエンは読んだ事ない(と思う)んですが、
「ねじまき鳥・・・」は面白く読みましたよ。
攻殻機動隊(アニメ)で興味を持って「キャッチャーインザライ」を読んでから他のはちょっとづつですが読みました。
エルサレム賞のスピーチは「世界の終わりとハードボイルド・・・」で書いていた事、ああそういう方なんだなぁ〜と思ってまた他のをぽつぽつ読み始めています。
「海辺のカフカ」も半年以上かかって未だ前半・・・通勤時間がないので今は病院の待ち時間くらいだなぁ〜!

映画「ハゲタカ」は主演の大森 南朋さんがあの(大駱駝艦)の麿赤兒さんの息子だったと先日はじめて知ってちょっと興味を持っているところです。
暗黒の血が流れてるのか〜と・・・^^;
by nakasama (2009-06-16 10:07) 

toro

*nakasamaさま*
大森 南朋さん、いいですよね~。憂いに満ちた眼差しがいいわ~と思って、
注目していました。お父さんの麿さんについて、「なんであのような舞踏をする
のか、わかってきた」という南朋さんの発言を最近どこかで読んで、益々将来
が楽しみだわ~と思っていますよー。

「ノルウェー…」は別に読まなくてもいいと思います。あれは、ムラカミハルキ
作品の中でも特殊なほうに入ると思うので。異色っていうのかなあ。
あれから入った人に、「ねじまき鳥」はまたとっつきにくい作品ではないかと
思うし…。
これだけ人気があるけれど、本当に面白く共感して読んでいる人って、少ない
んじゃないかなと思いますよ~。
て言っても、私は「1Q84」を面倒くさくて読まないんですけどね(笑)
だから感想も言えないんですけど…。
by toro (2009-06-16 15:17) 

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