MONT BLANCが泣いている [家族の話]
T君のお父さんの形見である。。。と言いつつ、全然使っていなかったであろうと思われる形見である。
MONT BLANCのボールペンとシャーペン。
なぜT君にこのような形見分けがあったかというと、文字や文章を扱う仕事をしているから。義兄や義母は、これが次男に合っていると思ってよこした品。
昨年の9月に義父が他界してから数日の間に、義母は気が狂ったように義父の物を整理し、捨ててしまったということを、昨年書いたと思う。そのなかで渡された形見の品だ。
私にはこのときの形見分けで心にわだかまっていることがある。
それは義父が使っていた時計のいくつかをほとんど義兄が持っていってしまったこと。別に長男が家を継ぐから、義父の遺志だから、と言われればそのとおりで、何も言うこともない。だけど、次男に一言くらいお伺いがあってもよかったのではないかと思うのだ。
義父の形見の一つとして、いつも使っていて身につけていたものを、一つくらい次男に分けてくれてもよかったのではないのだろうかということ。
T君は「別にいいよ」と言うような人だし、別に気しなければいいんだと思うんだけど、なんだか気持ち悪い。
義兄も腕時計が好きなんだろう。「腕時計のいくつかは僕がもらって、ボールペンやシャーペンなんかは使わないから、弟にやればいいや」……そんな風に聴こえてきてしまうのだ。
その義兄が持っていった腕時計の一つには、私たちが義父のために買ってプレゼントした時計が含まれている。義兄のために買ったわけではない。義父のために買ったものだ。
実を言うと、その時計が気になってしょうがない。私自身は義父のためにという思いを込めたものなのに、それが義兄のところにあるかと思うと気持ちが悪くなるのだ。心がザワザワする。
形見を受け取ったときにその時計はどうなったかと私は義母に聞いたのだが、彼女ははっとした顔をした後「お兄ちゃんが持っていった」と一言言った。一応、「はっ」とはしたんだけど……。形見分け以前に、義兄が腕時計をほとんど持っていってしまったんだ。義母もそれでよしとしたんだと思う。
全然、次男であるT君のこと…T君の気持ちを酌んでくれることはなかったんだなと思った一瞬であった。
本当に些細なことではあるんだけど、どうでもいいと言えばそのとおりなんだけど、少しは弟の気持ちを聞いて欲しかったと思う。
私の場合、母は生前に形見分けをした。であるから、何を渡されようが、母の気持ちだろうと思うからそのように理解したし、文句の一つも出てこない。
なんだかね、何をバカみたいにわだかまっているんだろうと思うよ。
それでMONT BLANCのことだ。
形見分けをしてもらって、その品々を紙袋に入れて持って帰ってきた。そして、その紙袋は依然としてそのままに、一年以上寝室横の廊下に置かれている。
T君はどうしたいのだろうな…と思ったけど、とりあえず今日、紙袋を片付けることにした。それで取り出したMONT BLANCである。おそらくほとんど使われていなかったんだろうと思う。ピカピカだ。
たぶん、今後もあまり使われることはないと思う。だって、今ではPCで文字を打つし、普段は500円くらいのシャーペンと三色ボールペンを一体化したもの一本でことが足りるんだもの。
そして義兄は「僕は腕時計、弟はペン」って……。腕時計を使うことはあっても、ペンはほとんど使わないだろうっ!と、マダ~ムは怒ったとか怒らなかったとか。
でもMONT BLANCに罪はない。
生きている人間の浅ましさ。もちろん私もである。なんたって、くだらないわだかまりを今も持ち続けているのだから。
そんなことは、本当はどうでもいいんだけど。
義父とMONT BLANCに敬意を表しつつ、書いてみたくなったお話である。
おしまい。
そのザワザワ感は、とてもよく分かります。
祖母が亡くなった時、家の母や叔母が送った着物は、たどり着いたときに、一切なかったそうです。
ありえね~、しばらく2人で怒っていました。
by (2007-11-05 22:42)
*こぎんさま*
どう説明していいかわからないのだけれど、嫌なものは嫌…というか、
ザワザワするんですよね。
やっぱり勝手に持ち去られた、という印象が強いせいなのでしょうか。
説明できないのが悔しいし、理解されていないというのが悲しいです。
たぶん、わかってもらえない、というのもあるし…。なんだかねえ、です。
by toro (2007-11-06 09:29)