一流のサポーターにならなくちゃあかんなと思ったW杯 [スポーツ]
サッカーW杯のことを誰もが書いているので、書くこともないか…と思って書いていなかったが、昨日の夜中(正確には今朝か)、イングランドVSエクアドル戦を観ていて、ベッカムのフリーキックがゴールネットを揺らした瞬間、「あ、やっぱり書こう」と思った。
サッカーW杯の日本代表の戦績は予想通りだった。決勝トーナメントには進めないだろうと私は思っていた。もちろん、勝ち進んで欲しかったし、勝ったら勝ったで私の予想も外れてよかったじゃん、という風に思ったと思う。
だけど、「やっぱりな」の結果だった。
よーく思い出して欲しいのだ、日本代表がW杯に出られるようになった頃のことを。ほんの2大会前からだ。それまでは、アジア予選で中東諸国に苦しめられて勝ち上がることさえできなかったのである。やっとのこと予選を勝ち上がってW杯に出られるようになった日本代表だ。しかも、前回は開催国というアドバンテージをもらっていたし、決勝トーナメントで一試合できただけでももうけもんであった。
そんな日本代表チームが、百戦錬磨のヨーロッパや南米代表チームに簡単に勝てるわけがない。
あのポルトガルだって今回W杯は4回目の出場で決勝トーナメントに勝ち進んだのは40年ぶりというんだから、推して知るべし。前回大会3位のトルコなどは、今回は予選敗退してしまってW杯に出られなかったくらいなのである。そういうヨーロッパや南米代表チームを差し置いて、決勝トーナメント(ベスト16)に残ろうなんて、無理だろうと思うのは当然だろう。
ジーコ監督のミラクルも可能性としてはあったかもしれない。また、稲本選手や鈴木選手、大黒選手のようなラッキーボーイが現われて勝てたかもしれない(ラッキーボーイについては後述)。だけど勝てなかったのは、弱いチームだったからなんだよ。それを認めなくてはいけない。
選手は頑張ったと思う。それはそれで労いたい。でも、「あれ?」と思うようなことが一杯あった。
だって、全然日本の選手ってプロじゃないんだもの。がっくりだったよ。
マスコミの報道にも辟易していたけど、中村俊輔選手の持ち上げ方が普通ではなかったと思っている。私は中村選手が好きではなかった。今も好きな選手ではない。
どんなにフリーキックの精度がよかろうが、よいパスをしようが、ピッチ上で棒立ちになっている姿を何度も見かけたときに、「ああ、この人は相変わらずだ」と思った。いくら疲れているからって、いくら体調が悪いからって、棒立ちになってパスをもらいに行こうとしない選手。それを何であんなにマスコミは持ち上げたのか。不思議でならない。
走れない選手はだめだと思うし、第一、プロであれば本番に備えて体調を整えるものだ。それなのに、ケガではなく発熱していたってあなた…。何でこんな選手をジーコ監督は使い続けたんだろうと思う。でもきっとジーコは中村選手はプロであるということを認めていたんだろう。だから使い続けたのだろう。だけどこの有様だ。
前大会でトルシエ前監督が「中村選手を外す」と決めたとき、「よし!」と思った私であったが、今はやるせなさ感で一杯である。
中田(ヒデ)選手のオレ様パスもどうかと思っていたけど、彼はフィジカル面がしっかりしていて(ケガが少ない!)、イマジネーションも豊かな選手であると思っている。スペースが開いていればそこへパスを送るという彼のやり方は理解できるし、イメージがあってパスしたんだなとわかる。そこへ誰かが走りこんでいれば……と何度思ったことか。結局、自己満足的なオレ様パスにしか見えなくなってしまう。
そういう意味では不幸なことだと思うし、孤独な選手なんだなと思えなくもない。
マスコミは「ヒデはイチローにはなれなかった」とWBCのイチロー選手を引き合いに出して論じたりしているけど、まずWBCとサッカーW杯を比較してはいけないと思う。さらに、イチロー選手と中田選手の個性は全く違う。それを比較して、中田選手がWBCのときのようなイチロー選手になれなかったから勝てなかったっていうのはお門違いな論調だ。「ほえ?」と思ったよ。
だったらね、中村俊輔選手や小野選手がイチローになったってよかったわけでしょ。何で彼らがイチロー選手と比較されなかったというと、一流選手と見なされていなかったという風にとることもできるわけ。変に逆説的に言うけどさ。
クロアチア戦の最後に、皆が皆、足が動かなくなってパスもよく回せないというときに、結局、頼りにされた選手というのは中田選手だった。
「あ、誰にもパスを回せない状態になっている」と思ったとき、最後の力を振り絞って走っている中田選手に日本の選手はパスを出しているんだよね。「他に誰もいないのか」と思った。中村選手は後方でぼーっと突っ立ってボールを見ているだけだったし…。中田選手が可哀相と思った瞬間だった。
いかんせん中田選手は足が遅い。自分でドリブルで突破するのは上手くないとわかっている。だから、パスを回して足の速い選手に突破してもらい、そしてシュート…と狙っていたんだと思うけど、もう誰も走らないし走れない状態になってしまって、どうしろというのだ! と思ったよ。負けて当然。
野球と違って、サッカーは選手が走り続けなければならないスポーツである。選手が走らなければ試合にならないのである。マスコミはいうのだろう。中田選手の性格のせいで他の選手はついていかなかったと。中田選手がイチロー選手のようにチームを鼓舞させなかったのが悪いと。でもそれは違う。最後にパスを回し、最後にメンバーが頼った選手は中田だったんだよ。それを目撃すれば、やっぱり彼がチームを引っ張ったのだし、彼が頑張って走ったお陰だったんだとわかる。これを見て、他の選手は中田選手を信頼していなかったと言えるだろうか。
ブラジル戦で負け、ピッチ上で中田選手が仰向けに倒れて泣いている姿を見たとき、彼の「勝ちたい」と強く思っていた気持ちが伝わってきた。
サッカーは前を向いて走り続けなければならないスポーツである。最後まで前を向き走り続けようとしていた中田選手に、イチロー選手のようなチームを鼓舞させるやり方を求めるのは間違っている。最後まで走り続けていた中田選手に、ついていかなかった他の選手が悪いんだ。プロじゃない。
最後には頼ったくせに、ついていかなかった選手たちが悪い。
さて、今回のW杯でラッキーボーイは現れなかったのかというと、ちゃんと現われていた。
本来であればサプライズで選出された巻選手、また大黒選手や玉田選手あたりにラッキーボーイになってもらいたかったが、それは叶わぬ夢であった。
では、誰がラッキーボーイであったか。
それはキーパーの川口選手である。
宮本選手のファールでPKになったとき、それを止めたのを見れば彼がラッキーボーイであったことをわかってもらえると思う。しかし、キーパーというのはもっともディフェンシブなポジションの選手である。オフェンスにはなれないのだ(チラベルト選手みたいに、攻撃に参加する選手もたまにいるけどね)。となれば、よくて同点。悪くて負け。点を取って勝つことができないポジションの選手である。その川口選手がラッキーボーイ。
要するに、もっともディフェンシブなポジションの川口選手が「勝ちたい」という気持ちを、中田選手と同様に持っていたということだ。だからラッキーボーイとなった。
でもそれは推して知るべし。ものすごく残念な結果である。
夜中にベッカムのフリーキックを観たときに、そんな日本の選手の力の違いをつくづく感じたのである。
そういえばさ、前回大会でベッカム様ベッカム様と言っていた女子たちはどこに行ったのか。トルコのイルハン選手をちやほやしていた女子たちはどこに行ったのかと思う。
一流選手を育てるには、一流の観客(サポーター)がいなくてはいけないのだろう。
このことに関しても日本はまだまだだな、と思った(私も含めて)。
*gataさま* nice!をありがとうございます。
by toro (2006-07-03 08:58)